専門医が患者さんの病状に応じて、手術、抗がん剤治療、放射線治療を中心に、治療効果が高く、 かつ体への負担が少ない最適の治療法を提示いたします。 食道がんと診断されても、安心して当科を受診してください。
胸腔鏡手術の創部
手術治療においては、従来は胸、腹を大きく切開する開胸開腹手術が主に行われてきました。現在では、小さな創で手術を行う腹腔鏡手術が広まり、最先端の胸腔鏡鏡下手術も普及しつつあります。当科ではこの低侵襲手術を積極的に行っており、最近では約60%の食道がん患者さんを低侵襲手術で治療し、体の負担の少ない手術に努めています。3Dモニターを使うことで従来の2D内視鏡と比較しより精密な手術が可能となりました。ただし、進行がんに対しては安全性を考慮し、従来の開胸開腹手術を基本的に選択しています。
食道がん手術の主な合併症のひとつに縫合不全があります。食道がんの手術は胸の中の食道をリンパ節と一緒にほぼすべて切除し、胃(胃管)を首までつり上げて食道と胃を縫合します。この縫合がうまくつかないで消化液が外へ漏れてしまうことを縫合不全と言います。全国平均では、約10%程度の縫合不全発生率ですが、当科では約1%程度と非常に良い成績を収めています。
ICG蛍光法では肉眼でわからない血流不良部がわかります
胃は通常多くの血管で栄養されていますが、胃を首までつり上げる際にほとんどの血管を切離することになります。縫合不全の原因の主なものは血流の悪い部分に縫合してしまうことによります。
ICG蛍光法は胃のどこまで血がめぐっているかを確認することができるため「胃のどこに食道をつないだら安全か」が一目瞭然でわかります。私たちの研究が認められ、2018年に保険収載されましたので、手術中に保険診療で行うことができます。
食道がんの手術は胃がんや大腸がんと違い、胸、腹、首の3カ所を同時に手術する体に大きな負担のかかる手術です。一方、食道の内視鏡治療は内視鏡で食道の粘膜を切除するだけなので体の負担は最小限で抑えられます。内視鏡治療ができるかどうかは食道がんがどこまで進行しているかによって判断します。現在、日本では「どこまでがんが深く進行(浸潤)しているか」を判定するために拡大内視鏡を使い、表面の毛細血管の形をみて判断することが一般的です。20年以上の経験を持つ拡大内視鏡観察のプロフェッショナルが内視鏡を行い、精密な術前診断を行っています。また、われわれは世界に先駆けて超拡大内視鏡をオリンパス社と協同で開発しました。この超拡大内視鏡は生体染色をすることにより、「生きた細胞」をその場で観察することができます。これによりさらに早期の食道がんを発見できることが期待されています。
また、食道がんは頭頸部がん(咽頭がん、喉頭がん)や胃がんを合併することが多いことが知られています。進行した頭頸部がんの手術では声を失うこともありますが、早期に発見し、内視鏡治療を行うことができれば声を失わないですみます。手術後の定期検査として内視鏡検査は1年に1回は必ず必要で、早期発見を心がけています。
超拡大内視鏡で観察した正常細胞と食道がん細胞
早期食道がんに対して、内視鏡治療(内視鏡的粘膜下層剥離術)を消化器内科と合同で行っています。
また、緩和ケアの目的で食道狭窄の強い患者様には食道ステントも行っています。
食道がんの患者様でがんの状態、お体の状態で手術ができない方、また手術が可能でも手術の希望のない方に放射線科と合同で化学放射線療法を行っています。当院では年間20-30件の新規の食道がんの患者様を放射線照射で治療しており豊富な経験を有しております。また放射線照射後の手術も行っておりますので安心しておかかりください。
食道がん・胃がん・大腸がんの薬物療法ページへ