腹腔鏡下手術に代表される低侵襲手術は、胃がん・大腸がんをはじめとして多くの手術で広く普及しています。腹腔鏡下手術の利点は開腹手術と比較して、出血量が少なく、腸管蠕動の回復が早く、術後の在院期間が短いことです。
一方で、腹腔鏡下手術では、手術に使用する鉗子は手元の動きとは逆方向に動き、さらに腹壁から遠いところでは実際の手の動きより大きく動きます。
また、直線的な鉗子を用いるため操作の制限があり、腹腔鏡下手術は難易度が高いとされています。ダヴィンチを使ったロボット支援下手術は、実際の手の動きが鉗子に反映される直感的な操作性、多関節を有する自由度の高い手術器具による人間の手以上の自由な動き、手ぶれ防止機構や実際の手の動きを最大5:1まで縮尺できることによる精緻な動作などにより、腹腔鏡下手術の操作困難性を補う最先端の低侵襲手術システムとしてその有用性が期待されています。
ダヴィンチは精緻な手術を行うために非常に有用な手術支援ロボットですが、操作には十分な知識と高い技術が求められます。執刀医になるためには関連学会の指針に沿って、執刀医としての資格を取得する必要があります。
当科でもロボット支援下手術の導入に関しては術式ごとに手順を遵守し、安全な実施に努めています。 2022年は年間36例のロボット支援下胃がん手術を施行し、126例のロボット支援下大腸手術を施行しています。