日本人の成人1万人を対象とした調査によると、およそ7500人に痔の経験があることがわかりました。そのうち実際に医療機関の受診をしたことがある人、30%にも満たないという調査結果がでています。
痔疾患のうち半数を占めるのが痔核(いぼ痔)です。
裂肛(きれ痔)は女性に多く、痔ろう(あな痔)は男性に多く見られます。
痔は大きく3つに分けられます。
肛門からの出血を認める病気には、痔のほかに大腸がんや炎症性腸疾患など色々あります。 出血を認めた場合には、すみやかに専門医を受診してください。
痔核の大きさで、1~4度に分類されます。
1度:少し膨らみがある程度
2度:肛門の外に出てくる
3度:手で戻さないと戻らない
4度:常に肛門からでている
排便の時にお尻からイボの様なものが出る。
排便後に出血したり、痛みがある。
排便後もお尻の中に残っているような感覚がする。
初期の段階では、薬(坐剤や軟膏、場合によって内服薬)を使って腫れや出血をおさえます。それでも軽快しない場合に、当科では注射で痔を固めるALTA療法をお勧めしています。大きく進行した痔には結紮切除法(痔核を切除して縫合を行なう、糸は自然に溶ける糸を使用しますので抜糸は不要)が適応となり、術後疼痛・排便管理のために入院が必要となります。その前の段階での治療をお勧めします。
ALTAは硫酸アルミニウムカリウムとタンニン酸という薬剤です。痔に流れ込む血液量を減らし、痔を硬化して粘膜に癒着・固定させる作用があります。
硫酸アルミニウムカリウム…出血症状や脱出症状を改善します。
タンニン酸硫酸アルミニウムカリウムの働きを調節します。
本剤をひとつの痔核に対して4か所に分割注射します。 複数の痔核にも、それぞれ投与します。
痔核を切り取る手術と違って、痔核の痛みを感じない部分に注射するので「傷口から出血する」「傷口が痛む」ということが少なく、入院期間の短縮につながります。
引き伸ばされていた支持組織が元の位置に癒着・固定して、脱出が見られなくなります。(1週間~2か月)
※ ALTA療法は、全てのいぼ痔に有効というわけではありません。詳しくは診察時に説明があります。
大きく進行した痔核や外痔核に対しては、結紮切除術が適応となります。
肛門の皮膚を切って痔核を露出し、痔核に流入する血管を結紮して痔核を切除します。切除した後の粘膜を、自然に吸収される縫合糸で縫い合わせます。手術自体は15分から30分くらいで終了しますが、数日間~1週間ほどの入院が必要になります。
標準的な経過は術後4~5日間排便後おしりが小さくズキズキと痛み、排便時の少量の出血が続きます。術後1週間後からは排便時の痛みも半分くらいに軽減して、出血もほとんど消失します。
細菌により肛門腺が化膿して肛門のまわりに管(瘻管)ができ、肛門周囲にトンネルが形成された状態になったものです。下痢気味な便通の不安定な人に多い痔ですが、特定の腸疾患(クローン病等)が原因で発生することもあります。
基本的に手術療法となります。ほとんどの場合は数日間から1週間程度の入院が必要です。痔瘻の手術は括約筋を扱うので、痔の手術のなかでも複雑なものです。
肛門周囲にできたろう管を開放して取り除く方法で、基本的に肛門の後側の浅い痔ろうに行ないます。肛門括約筋を切るので肛門がゆるくなる場合もありますが再発が少ないです。
肛門括約筋を切らずに肛門前側、横側の痔瘻に行います。肛門括約筋を切ると肛門機能が低下することが多いため、肛門括約筋は切らずにろう管をトンネルのようにくりぬく、又はゴムのリングを置いて排膿する方法です。この手術方法は術後の後遺症が少ないですが、まれに再発することがあります。
きれ痔は便秘の女性に多く、急性裂肛(きれ痔)は軟膏などで治療できますが、慢性化すると肛門が狭くなったり、ポリープができる場合があります。
ポリープ切除術と必要に応じて括約筋の拡張術も行っています。
肛門手術総数 | 275件 |
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<内訳> | |
痔核根治手術(ALTA療法含む) | 224件 |
痔ろう根治手術 | 36件 |
痔核根治手術+痔ろう根治手術 | 8件 |
肛門狭窄形成手術 | 3件 |
肛門ポリープ切除術 | 2件 |
直腸粘膜脱修復術 | 2件 |